金唐革紙(金唐紙)


               「旧岩崎邸の華そのデザイン展」金唐革紙製作実演会 後藤 仁 Kinkarakawashi Works

              「旧岩崎邸の華そのデザイン展」金唐革紙製作実演会 (2003年11月15日 旧岩崎邸庭園)





国重要文化財 「入船山記念館」(広島県呉市) 金唐革紙
入船山記念館の洋館客室、洋館食堂、応接所、廊下腰壁の「金唐革紙」です。1994年~1996年の約2年間をかけて私、後藤 仁を中心とする5人位で製作しました。
当時の館長の許可と説明を受けて撮影しています。 撮影:2000年2月2日


国重要文化財 「移情閣・孫文記念館」(神戸市) 金唐革紙製作 - 打ち込み(1998年11月、1999年4月) 後藤 仁 ほか
現在、国重要文化財 「移情閣・孫文記念館」(神戸市)に貼られている、「金唐革紙」の打ち込みの貴重な映像です。
私を中心とする、東京藝術大学日本画専攻卒の若者4人で打ち込んでいます。とても大変な作業ながらも、良き仲間との良き思い出でもあります。




国重要文化財 「移情閣・孫文記念館」(神戸市) 金唐革紙製作 - 彩色・貼り込み(彩色 1999年9月、貼り込み 2000年2月~4月) 撮影:後藤 仁
金唐革紙の緑色の地色彩色は、面相筆を用いて、畳一枚のサイズで3~4日かかります。現地での貼り込みは、2か月余りをかけて私達4~5人で貼り込みました。
この映像は、現在ほとんど残っていないと思われる、移情閣復元工事のとても貴重な映像です。



 私は本来日本画家ですが、絵の勉強時期には日本画の制作・展示と並行して色々な事にも挑み、その技術も日本画に吸収してきました。『金唐革紙 〔きんからかわし、現在は「金唐紙(きんからかみ)という場合もある。国選定保存技術と呼ばれる、手製の高級壁紙もその一つです。
 現在、金唐革紙製作の最も高度な知識・技術を保持しているのは私、後藤 仁となっており、2006年より実質的な国選定保存技術保持者として「金唐革紙保存会」を主宰し、社会的には金唐革紙製作の第一人者としても知られています。

 2016年には、デンマークのコペンハーゲンから来日された、IT University of Copenhagen 准教授の安岡美佳先生と、コペンハーゲン市の絵画・インテリア修復師のアナ・シモンセンさんの取材を受け、海外からの注目度も高まっています。今後は、東京藝術大学で「後藤 仁 金唐革紙 特別講義」開催も予定されており、後進への金唐革紙製作技術・知識の伝承に、ますます尽力する事になります。


金唐革紙:IT University of Copenhagen 准教授の安岡美佳先生と、コペンハーゲン市の絵画・インテリア修復師のアナ・シモンセンさんと私

金唐革紙の紹介・解説 : IT University of Copenhagen 准教授の安岡美佳先生と、コペンハーゲン市の絵画・インテリア修復師のアナ・シモンセンさんと私(2016年11月15日)


金唐革紙の歴史

 欧米の皮革工芸品を「金唐革(きんからかわ)」といい、宮殿や市庁舎などの室内を飾る高級壁装材であった。江戸時代前期の17世紀半ばに、オランダ経由でスペイン製の「金唐革」が輸入されたが、鎖国を行っていたために入手が困難であった。また、牛革では大きな製品が出来ない事や、湿度の高い日本での衛生面の問題もあった。そこで、日本の風土になじむ和紙を素材とした代用品の製作が日本で行われ、1684年に伊勢で完成した製品が『金唐革紙』(「擬革紙(ぎかくし)」ともいう。)の元祖である。 

 明治時代には、大蔵省印刷局が中心となって製造・輸出され、ウィーン万国博覧会・パリ万国博覧会など各国の博覧会で好評となり、欧米の建築物(バッキンガム宮殿等)に使用された。国内では、鹿鳴館等の明治の洋風建築に用いられたが、その多くは現在消滅し、現存するのは数ヶ所だけという貴重な文化財になっている。昭和初期には徐々に衰退し、昭和中期以降その製作技術は完全に途絶えていた。


金唐革紙の復元製作

 1985年、「旧日本郵船小樽支店」(国重要文化財、小樽市)の復元事業で金唐革紙製作方法の研究を依頼された新設の金唐革紙の研究所は、国立東京文化財研究所の助言を受けながら、現代版の『金唐革紙』を復活させる。しかし、当初は研究所経営者が製作も兼ねており本格的な技術者がおらず、製品品質は低く製作量は少なかった。(現在世間では「金唐紙(きんからかみ)」とも呼ばれているが、この名称は金唐革紙の研究所製品にのみ用いる、研究所によって新しく考えられた商品名である。)

 1995年、「入船山記念館〔旧呉鎮守府司令長官官舎〕」(国重要文化財、呉市)の復元事業より、当時、東京藝術大学日本画専攻在学中の学生であった 26歳の私(後藤 仁)を中心に、3~6名位の学生が随時研究所に加わり、私達によって復元当初には無かった多くの改良が重ねられ、製品の質・量ともに飛躍的に向上した。

 以後12年余にわたり私が実質的製作の中心的役割を果たし、1999年に「移情閣〔孫文記念館〕」(国重要文化財、神戸市)、2002年に「旧岩崎邸」(国重要文化財、台東区)等の主要な復元を行う。
 その間、紙の博物館(東京都王子)、呉市立美術館(広島県呉市)、旧岩崎邸庭園、入船山記念館、フェルケール博物館(静岡県)、大英博物館、ヴィクトリア&アルバート美術館(イギリス)等で『金唐革紙展』を開催して、その普及に努める。これらの功績により、金唐革紙の研究所を代表して経営者が2005年、名義上の国選定保存技術保持者に認定される。

 その後、元学生達は全員それぞれの制作に戻り、研究所は本格的な製作体制は終了して、現在は講演・展示活動のみ経営者が行っている。
 私は2006年に研究所をはなれ、金唐革紙製作技術を日本画にも取り入れ、本来の日本画家として活動している。また
実質的な国選定保存技術保持者として『金唐革紙保存会』を主宰して、展覧会等での金唐革紙の紹介や製作技術保存・存続にも尽力し、将来的に必要があれば製作出来る体制を維持している。 現在、金唐革紙製作全般にわたる最も高度な製作知識・技術を有しているのは私、後藤 仁で、現役で高水準な製作が可能なのは私と元学生の計4名しかいない。


金唐革紙の現存する建築物

 明治から昭和初期の金唐革紙(旧製品)が現存する主な建築物。および、新しく復元製作された金唐革紙(復元品)がはられた建築物。

          http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/bunkazai/bunkazai-data-102010500.html

          http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index035.html
          http://sonbun.or.jp/jp/
          http://feel-kobe.jp/sightseeing/spot/?sid=68


     その他、「紙の博物館」(東京都王子)には旧製品、復元品(後藤 仁の製作品)が収蔵されている。


後藤 仁の金唐革紙製作実績一覧

      (%は、金唐革紙の研究所作業記録に基づいて、製作量・時間から割り出した、作業全体に対する貢献度。) 

     後藤 仁は不参加。(後に、ここに使用された「金唐革紙」の製品製作をする。)

     後藤 仁は不参加。(後に、ここに使用された「金唐革紙」の製品製作をする。)

     製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に4名が製作に参加。
     〔後藤 仁の製作実績〕
      企画40%、版木修復100%、箔押し90%、打ち込み90%、やすり仕上げ100%、ワニス塗り90%、手彩色80%

     製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に6名が製作に参加。
     〔後藤 仁の製作実績〕
      企画40%、版木修復100%、箔押し90%、打ち込み90%、ワニス塗り90%、手彩色70%、シルクスクリーン彩色80%、現地貼り込み 80%

     製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に5名が製作に参加。
     〔後藤 仁の製作実績〕
      企画60%、版木修復100%、箔押し100%、打ち込み100%、ワニス塗り100%、手彩色30%、シルクスクリーン彩色100%


 その他、「金唐革紙製品(金唐革紙見本帳、屏風・衝立・額製品等)」の製作、「金唐革紙展」の展示製品製作・会場設営・製作実演は、後藤 仁を中心に行われた。

 現在までに、『金唐革紙』の最も多くの実質的製作にあたったのは後藤 仁(全復元製品の約85%の貢献度)で、他の者の50%以下の貢献度を大きくしのいでいる。したがって、『金唐革紙』の最も高度で完全な製作知識・技術を保有しているのは後藤 仁といえる。



金唐革紙の製作工程

  1. 「合紙」 手すき楮紙と三椏紙を合紙して、原紙を作成する。
  2. 「箔押し」 原紙に、金・銀・錫箔などの金属箔を押す。
  3. 「打ち込み」 文様が彫刻された版木(桜材)に、水で湿らせた原紙をあて、紙の裏より豚毛の強靭な刷毛で丹念に打ち込み、凹凸文様を出す。
  4. 「ワニス塗り」 錫箔の場合のみ、天然ワニスを 塗って金色を出す。
  5. 「彩色」 漆・油絵具等で、丁寧に手塗り彩色をする。 種類によってはシルクスクリーンで彩色したり、紙やすりでやすりがけをして古色をつける。

 この製作技術は大変難しく長い経験を要する。現在は版木製作以外の全ての工程を同一人物が行うので、一日に刷毛で打ち込む事6時間以上という体力と、箔押し・精緻な彩色という、手先の器用さも必要となる。版木は明治・大正期に製作されたものを用いる場合が多いが、旧来の金唐革紙よりデザインをおこし新しく版木を製作する場合もある。

 現在製作されてきた金唐革紙は全て旧製品のデザインによる「復元製品」で、新しいデザインによるオリジナル作品の製作は需要が無くて今まで行われていない。




「金唐革紙展」開催地 (主要展覧会のみ抜粋)

大英博物館、ヴィクトリア&アルバート美術館、紙の博物館、呉市立美術館、旧岩崎邸庭園、入船山記念館、フェルケール博物館(静岡)、江戸東京博物館、
東京家政大学博物館、姫路市書写の里美術工芸館、箱根ラリック美術館、東京芸術劇場、第7回国際シンポジウムin長野(ホテル国際21)、小津和紙博物舗小津ギャラリー、 OZONE新宿ショールーム、ミキモト本店ミキモトホール、銀座一穂堂サロン、上方銀花、 他 多数開催。

金唐革紙関係 テレビ放送 (展覧会・建造物・アトリエの取材、放送。後藤 仁 出演番組を中心に抜粋)






 私が金唐革紙の研究所を離れた大きな理由は3つあります。まずは、本業の日本画の制作に専念したかった事。2つめは、実質的にはほとんど私達若い者2~6名位が金唐革紙製作をしていたにもかかわらず、外部には経営者が一人で全てを製作しているという形で喧伝されていたという不条理。3つめは、経理・運営を一人で手掛けていた経営者が、「研究所発足当時から長年不正経理を継続しており、巨額の脱税をしている。」という経営上の法的不備の告白をした事によります。
 現在でも、金唐革紙の現存する各施設では、『金唐革紙』の製作者は研究所経営者のただ一人のみとされていますが、一人で出来る規模の仕事ではありません。当時、研究所の経営者は実質的製作にはほとんど参加せずに、企画・経理等の研究所経営のみを行っていました。 「旧岩崎邸庭園サービスセンター」や、その監督所の「東京都公園協会」、「孫文記念館」、「入船山記念館」、「紙の博物館」などのいずれも私達数名が実質的な製作をした事を把握していますが、現在の日本では経営者(出資者)と発注者の権限が強く、実際苦労して製作にたずさわった人の権利はまだまだ低いのが現状です。

 著作権法 第2条1項12号、第64条、第65条では、「2人以上の者が共同して創作した著作物は共同著作物となり、その著作権は共有となり共有者はそれぞれの持ち分を有する。」と規定されており、
文部科学省 文化審議会 著作権分科会報告書 第1章第2節 共有著作権に係る制度の整備について においては、「『共同著作が成立するためには、2人以上の者が『共同して創作したといえる必要があり、各人の寄与が創作性のあるものでなければならない。例えば、単なる著作者の手足として参画している補助者や、企画を立てただけで、実際の創作には何ら関与していないような者は共同著作者とはならない。」と解説されているので、中心的に創作的に金唐革紙製作にあたった私や数人の若者達は共同著作者と言え、後半時期になるほど企画のみをしてほとんど製作に加わっていない経営者の方がより共同著作者としての資格が少ないとも解釈できるのです。


 ●文部科学省公式ホームページ ─ 文化審議会 著作権分科会報告書 第1章第2節 共有著作権に係る制度の整備について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/07020702/004.htm

 近い将来、それぞれの施設で、製作者の名前を全て正確に記載していただける日が来る事を願っています。その様な公平な日が来る事が、製作者側の唯一の望みです。このホームページを見られた皆様にも、ご支援・ご教導の程よろしくお願い申し上げます。  
  日本画家・絵本画家、金唐革紙保存会  後藤 仁

(※最近、かなり多くの私の支援者やファンの方が、「旧岩崎邸庭園」「入船山記念館」等の販売コーナーの金唐革紙しおりや金唐革紙の本を、私の為になると思われて購入されている様です。お気持ちは誠に有難いのですが、現在私は金唐革紙の研究所を完全に離れており、購入された収益は全て研究所の経営者のものとなっています。もし、私の為のご購入でしたら、金唐革紙グッズではなく、私の『絵本』作品などをお求め下さいましたら有難いですので、よろしくお願い申し上げます。)


金唐革紙のくわしい 製作エピソードは、後藤 仁 公式ブログ「後藤 仁(GOTO JIN)の制作・旅日誌」(金唐革紙 製作)をご覧下さい。


http://gotojin.blog.fc2.com/



 



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